東京義賊ブログ

同じショーは二度と無い

大道芸人ってのは、毎回同じことをやっているというイメージを持っている人もいるかもしれません。
大道芸人ってのは、完成されたショーを繰り返せば良いと思っている人もいるかもしれません。
同じネタをやれば同じようにウケるとか、同じ喋りをすれば同じ反応が返ってくるなんて思っている人はいないと思いますが。

毎回毎回、異なる環境下で行う大道芸は、全ての回が全く異なる、この世で1回しか存在しないショーなのです。

また、我々演者としては、その事を理解した上で毎回正解に近いパフォーマンスを求めて工夫を凝らしてパフォーマンスしなければなりません。

今日の現場は都会ですか?田舎ですか?
ショッピングのついでですか?お祭りでしょうか。
対象は子ども?大人?
キリがありませんが、いくつか考えてみたいと思います。


天気はどうですか?
晴れていれば気分が晴れやかで、曇りだと憂鬱で、雨だとジトジトして嫌だなという感じでしょうか?

では、この「晴れ」「曇り」「雨」という3つの要素に、季節という要素を掛け算してみます。
・春×晴れ=ぽかぽか暖かい。さくらが咲く。眠くなる。花粉が飛ぶ。
・春×曇り=強い風が吹く。日光が当たらないと肌寒く感じる。
・春×雨=寒くはない。車がないと出かけられない。花粉が飛ばない。桜が散る。
・夏×晴れ=暑い。日焼けする。喉が乾く。熱中症になる。汗臭い。
・夏×曇り=ずっと曇っていて欲しい。晴れよりマシ。ゲリラ豪雨くるかも。
・夏×雨=台風。集中豪雨。気温は過ごしやすい。少しなら濡れても気にならない。
・秋×晴れ=秋晴れ。気持ちがいい。ぽかぽか暖かいが夜は寒いので寒暖差が激しい。紅葉狩り。
・秋×曇り=肌寒い。紅葉が進む。鱗雲など季節感を味わえる。都内では銀杏が臭う。
・秋×雨=秋の雨は長雨。寒くて出かける気にならない。道路が乾きにくい。
・冬×晴れ=空気が乾燥している。暖かい時間は一瞬だけ。空気が澄んでいて遠くの景色まで見渡せる。
・冬×曇り=背中を丸めて歩く。マフラーやコートが必須で厚着になる。寒い。
・冬×雨=冷たい。少し濡れただけで体温を奪われる。雪が降るかも。雪が降るとテンション上がる人もいる。

主観が入っているのは否定しませんが、このように一見して同じショーに見えても、環境が常に異なるため、全く同じ条件でパフォーマンスをする事は無いのです。

同じショーに思えるというのはお客様目線での話です。
演者としては同じクオリティーを出しつつ、毎回毎回異なる環境に合わせて、世界にひとつだけの、たった一回だけのショーを行います。

今回のお話で挙げたのは天候と季節だけでした。
では、他にはどのような要素があるでしょうか。

お客さま:人数、性別、国籍、年齢、身長、体型、趣味、顔、髪型、家族構成、団体か家族か個人か、食前食後、メガネか裸眼か、脳年齢、好みのタイプ、出身地、職業、星座、血液型、学歴、給料日前後・・・。

会場:芝生、板張り、コンクリート、屋内外、照明、マイク、スピーカー、音量、音質、時間帯、他のイベントは何?、司会、宣伝、ポスター、立地、形状、起伏、色味・・・。

もっと細分化して考えても良いです。
小学生:性別、学年、好きな色、好きな教科、友達何人?、出身は幼稚園?保育園?、家族構成、親の職業、教育方針、誕生日、持っているゲームソフト、少年ジャンプを読んでいる?、好きなTV番組は?、学校で流行っている遊び、中学生になったら入りたい部活、ピアノ等の習い事。勉強好き?好きな科目は?、クラスに好きな子いる?

どのような要素があるかを考え、どのように対処したら良いかを考え、それを即座に出せるようにトレーニングすることにより、唯一無二の、その時にか出来ない最高のショーを行うことができます。

まずは「同じ回は二度とない」という事を認識した上で、最良のパフォーマンス行う事を目指すことと、全ての人を知るために多くのことを学び、多くの人と出会い、探求と経験を繰り返し行い積み重ねることが大事です。

その日、その場所、その時間のあなたの最高の大道芸は、その日、その瞬間を迎えるまでに積み重ねてきた知識と経験からしか生まれないのです。