東京義賊ブログ

大道芸パフォーマンスの構成の仕方

大道芸って、概ね30分前後演じる事が多いと思いますが、その構成ってどうやってますか?

ちゃんと起承転結を考えていますか?

起承転結ってなんですか?

大道芸というのは、全く興味を持っていない人や、別の目的があってたまたま通りかかった人など様々な不特定多数の多種多様な人間を相手にショーを見せるエンターテイメントです。

映画や小説のように起承転結があった場合、最初から観ている人には伝わりますが、大多数が途中からの鑑賞になるため、起承転結のうちの転結だけを観たり、結だけを観たりする事になり、意図しているストーリーや感情の揺さぶりが伝わりません。

途中から見始めた人がのめり込んで楽しめるような仕掛けと、最初から観ている人に失礼の無いような構成の方法が必要になります。

「むかしむかし、あるところに・・・。」
「おおきな桃がどんぶらこ・・・。」
これは有名な昔ばなし「桃太郎」の一説です。昔ばなしの場合、大道芸と異なり最初から最後まで通して話を読む、聞くことが多いので、そこは異なりますが、では「桃太郎」は何をする人物でしょうか。
「桃太郎」が何をして世の中が平和になりましたか?
「桃太郎」は何をするために鬼ヶ島へ行きましたか?


そうです。鬼退治をしたんです。

桃太郎の話の中では鬼退治は最後の一幕。これがメインパフォーマンスになります。

あれ?桃太郎って桃から生まれるんだよね?とか、桃太郎には犬と猿とキジが出てくるよね?とか、おばあさんがきび団子をつくるよね?とか思っている人もいると思いますが、それは物語の序章です。
僕のパフォーマンスで言えば「マイクチェック!」とか喋っていたり、お客さんに声をかけたり。バルーンアート、ディアボロ、シェーカーカップなど様々な動物やきび団子的な物が登場します。
メインはローラーバランスであり、桃太郎なら鬼退治です。

大切なことは、いかにメインを盛り上げるために、その前を構成するかという事です。

知らない人同士がたまたま同じ空間でたった一人の演者を観るという妙な空間で一体感を作り出し、全員の目線を集め、集中して観てもらうためにはどうしたら良いのでしょうか。

「みてくださーい!」と声をだすのではありません。
ついつい観たくなる方法。いくつかあるのですが、そのうちの最も大切な事は
「観ている人に好きになってもらうこと」です。
自分の好きな人が目の前で頑張っていたら応援したくなるでしょう。
自分の好きな人が「いまからメインパフォーマンスがんばります」って言っているんです。観ちゃうよね。

つまり、桃がどんぶらことか、犬が団子を食べるとか、桃太郎の成長が早すぎるとか、そういう事をやっているうちに観客を魅了していき、観客が桃太郎の味方になった頃合いで鬼退治に行くのです。

これをわかりやすい言葉で言うと

です。

メインの前に何をやるかではなく、メインに入るまでにどのように環境を整えるのかが重要です。

起承転結ではありません。あーしてこーして最後にドーン!を、あーしてこーしてあーしてドーン!にするとか、あーしてこーしてあーしてからのちょっとだけこーしてから最後にドーン!とか。

あ、最後は必ずドーン!です。自分の大切にしている作品や、今最も伝えたいメッセージ、魅せたいパフォーマンスを最後に持ってきます。
それまでのプロセスがうまく運んでいれば、観客は無条件に(とはいきませんが、そのくらいの勢いで)必ず味方になって応援してくれます。
その時の観客と演者の関係性は、偶然街で会った同級生とか、たまたまバーで隣の席に座った人と名字が一緒だったとか、なにか運命的な結びつきを感じている状況に近いです。そんな人が『最後にドーン!』をやれば、必ず盛り上がることでしょう。そして良い想い出として残る素敵な時間になります。

僕のパフォーマンスは色々な事をやりますが、目的は「最後にドーン」をやるためにあります。
・観客を増やすため
・時間を伸ばすため
・満足度を上げるため
なんて思っている方もいると思いますし、それが間違えているわけではありません。しかし一番気を遣って取り組むべき方向は最後のドーンな訳です。そのために会場作り、雰囲気作り、観客と友達になることを一生懸命やっている時間が、僕ならトークやジャグリング、バルーンアート等を行っているパートに該当します。それこそが大道芸で大切なパートです。メインのパフォーマンスはもちろん大事ですが、一番気を遣うのは「あーしてこーして」の部分であり、大道芸という難しい環境下での作品のクオリティーはそこに全てがかかっています。